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「今日も収穫なしっと。さて、帰りますか」
と言って振り返った瞬間、最悪な出来事を目前とする。
熊の魔物がそこに立っていた。
口から唾液を滴らせて美味しそうな食い物をゲットしたといわんばかりの表情だ。
「俺は食べても美味しくないですよ……? 運動してないから脂肪のってるし……」
「だが、それがいい」
やべえ墓穴掘った。
つか、言葉通じんのかよ。
俺は熊に背を向けて全力で走った。
一応、両足に魔法で強化をしといて。
だが、
「そんなスピードで俺から逃げられると思っていたのか?」
殺気。
俺は直感で右前方に思いっきり飛んだ。
瞬間、わき腹が熊の爪でかすりとられ激痛が走る。
が、倒れこんで痛がるわけにも行かない。
次の一撃が致命傷になるかも知れない。
熊の攻撃が来る前に足元に爆発の魔法を発動して熊の動きを牽制する。
「…………こざかしい」
案の定、爆発が砂埃を舞い上げて眼くらまし効果を果たしていた。
その間に俺は父親の秘蔵庫から拝借したウォッカが入ったビンを取り出す。
このビンには少し細工をしており、少しの衝撃ですぐに壊れるような仕様となっている。
地面がアスファルトならそんな必要もなかったが、土なので割れない可能性があったからだ。
砂埃が舞い終わる前に俺は熊公にビンを投げつけた。
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