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しんしんと降る雪に地面は白く彩られる。だが、その白の中に二つの足跡が続いていた。
大きい足跡と小さな足跡だ。
その足跡をたどると前には二つの人影が見えた。
大人の女性と小さな少女だ。
女性は優しく少女の手を握って、外の厳しい寒さから少女を守っていた。よく見れば女性の足取りは少女に合わせ、とてもゆっくりだ。
「ねえ、お養母さん」
少女は女性を母と呼んだ。
見上げるその眼に寒さに対する不満は一切感じられず、母親と手をつなげて嬉しいことが見て取れた。
「どうしたのですか?」
「今日はティリュン様の誕生祭よね。だからみんなとおいしいもの食べて、遊んで楽しむの。だからお願い、今日はいつもより少し夜更かししていいでしょ?」
少女の要望に母は少しだけ笑顔になり足を止める。だが次には少女に目を合わせ厳しい顔を向けた。
「ダメですよ。いくら誕生祭とはいえ、院の決まりはしっかり守ってもらいます」
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