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「向坂は去年も委員長やってたし、慣れてると思いまーす」
そうでーす、と取り巻きたちがケラケラ笑いながら相槌をうつと、先生は室内を見回して他の意見も確認する。
誰からも異議が上がらないのを見ると、その視線は俺に移った。
「え、と…向坂くん?向坂くんは、どうかな?」
俺は無言で頷く。
今更何を言ったところで何も変わらないだろう。
決まり!と囃し立てる片桐と、我関せずといった様子の室内に、何か言いたそうに俺を見ていた先生だが、最終的には何もいわずに室中に視線を巡らせた。
「では委員長は向坂君に。次は副委員長だけど、やりたい人はいますか?」
そう尋ねると、今度の生徒の反応は何とも微妙なモノだった。
あー、副委員長か…。向坂と一緒じゃなあ?
根暗移りそうだしな。
誰か去年みたいに一緒にやる物好きいねぇのかよ。
あはは、と笑う阿呆と、何かを察したように目を細めてその言葉を聞いている先生。
移る移るって風邪じゃねえんだから。どんだけ子どもだよ。
どうやら時間がかかりそうだと、視線を窓の外に移した。
誰と組もうが構わない。好きに決めてくれ。
最終的に、副委員長は片桐になった。取り巻きたちが彼に押し付けたのだ。見かけに寄らず、片桐は中等部の時に学級委員の経験があるらしいのだ。
その時のあいつの顔は、なかなかに見物だった。
それからは普段通り授業受けて、普通に昼食とって放課後を迎えた。
「明日は朝全校集会があります。一限は集会で無くなるので、普通授業になるのは二限からですね。
はい、それじゃあ今日はここまで」
先生の言葉を合図に号令をかけて、一日の仕事は終了。
あとは寮に戻って、夕食とって寝るだけだな。
鞄に配布された教科書を詰めて、それを肩にかけたところで麻宮先生に呼ばれた。
「はい?」
「ちょっといいかな?」
柔らかな笑顔だが、嫌だとは言わせない雰囲気がある。
はい、頷いた俺に、教室に残っていた生徒から批難の声が聞こえてきたが無視して先生の後を追った。
連れて来られたのは、英語科準備室。
そういえば、この人は英語の授業担当してたっけなとのんびり考える。
「どうぞ入って」
「…失礼します」
先生に促されて中に入る。先生は俺を招き入れると、ティーポットとカップを二つ用意しながら、座って、とソファを指差した。
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