1st

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室内には、高級そうなソファが二つ向かい合って置かれていて、その二つのソファの間にはテーブルが置かれていた。 あとは、書類や教材の入った棚やティーセット、コーヒーを入れるための機械がある。 「ダージリン、アッサム、他にも何種類かあるんだけどどれがいいかな?好みのがあればいいんだけど」 「お構いなく。それより、お話があるんじゃなかったんですか?」 ティーセットと茶葉を交互に眺めていた先生が、困ったように笑いながらこちらを見る。やがて諦めたように一つ息を吐いて、前のソファに腰を下ろす。 「それじゃあ早速。今朝の委員決めのことだけど、委員長、押し付けられるような形になってしまっていたから。 もしかしたら、断りずらくて流されてしまったんじゃないかと思ってね。もしそうなら明日、決め直そうかと思うんだよ」 「そうですか。でも別に俺、流された訳じゃありませんから」 「そう、なの?本当に?」 確認するような響きにその目を見て頷く。 「そう。…分かった。余計な心配だったかな」 時間取らせてごめんね。 納得してはいないようだが、俺の意思を尊重してくれるようだ。 優しい人だ。優しい人なだけに、怖い。 先に線を引いておかねば。 「そうですね。俺のとこは放っておいて下さい」 吐き捨てるようにいうと、茫然としている先生に、失礼しました、と頭を下げて帰路に着いた。 赴任二年目でこんな面倒な奴がいるクラスを受け持つなんて可哀想に、と同情的なことを思いながら。 校舎から徒歩二分ほど。 寮の自室に戻り、ソファに倒れ込む。 「疲れた」 久しぶりにたくさん喋った気がするのは、気のせいじゃないだろう。 今は食欲は無い。 なら食欲なんてモノが湧いてくる前に、さっさと寝てしまうことにしよう。 久々に疲労を訴える体を起こして、制服から部屋着に着替える。 シャワーを浴びてからベッドに寝転がり、アラームが設定されているのを確認してから、枕元に放って目を閉じた。 早く夏休みになればいいのに。 .
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