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正門まで歩いていくと、そこには四つの人影が。
なんで四つ?
「あ」
目の前の光景にあまりに驚いて、歩みを止める。
目の前には濃厚なキスシーン。
「んん!ん、ぐ…っ」
響く水音に、嫌になって耳を塞ぐ。濃厚なキスを喰らっているのは、ボサボサの髪に眼鏡をかけた少年。
側にいる赤髪は茫然自失しているし、焦げ茶の髪の子は…何故だか目を輝かせている。
なんとも言えない現状にどうしたものかと頭を悩ませていると、ドスッという音と共に少年にキスを仕掛けていた男が膝を着いた。
「はっ……はぁ…ってめ、いきなり何すんだよ!」
「っ……ああ、すみません。君のことを気に入ったもので、つい」
キスされていた生徒の蹴りに、特に気圧された様子も無く立ち上がったのはこの学園の生徒会副会長に見える。
銀のフレームの眼鏡に、アーモンド型の落ち着いた茶色の瞳。それに明るい茶髪。
間違いなく生徒会副会長だ。
身持ち固くて有名なのに転校生に手を出すなんて、この人女みたいだけど一応男なんだな。
失礼なことを思いながら、生徒会がいるなら俺は必要ないよな、と判断し踵を返す。
…いや、返そうとした。確かにしたんだが。
自由の効かなくなった右手を辿って相手を見上げると、そこには困り果てた顔の赤髪の青年が。
「な、なあ……俺たち、これどうすりゃいい?」
いや、知らない。
ぎゃあぎゃあ喚いている眼鏡の子と、ぎゃあぎゃあ喚かれている副会長を一瞥しながら赤髪は苦笑いしながら俺に尋ねて来る。
それはまさに藁にもすがるという表現がぴったりだ。
無言で肩を竦めて見せると、赤髪の笑いは引き攣ったものに変わった。
「そ、そこをなんとか…!」
そう言われても。
「おや、貴方は」
背後から声がかかり、固まる。
出来れば関わりたくなかったのに。
ため息を吐いてから、背後を振り返ると俺の顔を見た副会長の目つきがキッと鋭くなる。
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