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「はい、ありがとう。皆さん、三人はこの学園に来たばかりなのでいろいろ手を貸してあげてくださいね」
後ろの席に座るよう三人を促しながらの先生の言葉に、皆、はーい、と緩い返事をする。
「あ、向坂くん、二限の俺の授業のとき彼らに、学園内を案内してあげてくれる?早いとこ慣れないと、いろいろと苦労しちゃうだろうし」
声を掛けられ頭を上げると、首を傾げている先生と目があった。
昨日と同じ断れない笑顔だ。
無言で頷くと、先生は今度は満足そうな笑顔を返してくれた。
「さーて、一限は講堂に移動だね。じゃあ、皆移動して」
元気に笑う先生に続いて、うーす!と教室を出ていくやつらを見送り、俺も席を立つ。
「あ、あの!」
教室を出る一歩手前で呼び掛けられる。
足を止めて振り返ると転校生三人。
慣れていないだろう敬語で、声をかけてきたのは、ボサボサくんこと秋山だ。
首を傾げることで話の続きを促すと、たどたどしく話し出した。
「ぼ、僕は秋山 空司っていいます。よろしくね、……えっと?」
最後は素っぽく笑いかけながら、手を差し出される。それを一瞥して、口を開く。
「委員長でいいですよ。…先生がああ言うから案内はするけど、極力自分たちで早く慣れてくださいね」
それに俺に関わるとろくなことないですよ、と。
早口に告げて、さっさと踵を返す。最後に見たのは、ぽかんと口を開けて間抜け面の三人。
せっかくの整った顔が台なしだな、なんて思いながら講堂へと足を進めた。
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