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「理事長。いい加減お話を切り出して差し上げなければ、三人が時間に間に合わなくなってしまいますよ」
「ん?あーそれもそうだね。久遠、例の物を持ってきてくれる」
「畏まりました」
久遠、と呼ばれた秘書さんは恭しくお辞儀をして隣の部屋へと歩いて行く。
久遠さんの本名は、確か風美 久遠といった筈だ。
兄ちゃんとは高校時代からの付き合いで、昔は家にもよく遊びに来ていたのをうっすら覚えている。
久遠さんは男でありながら、ものすごい色気を垂れ流している人で、兄ちゃんはいつも危なっかしくて目が離せないんだよなー、とよくぼやいていた。
だが、言葉とは裏腹にその表情は満更でもなさそうだ。
もしかしたら、兄ちゃんは久遠さんが好きなのかもしれない。
俺は、偏見なんかは無いし、性別なんか関係無く本人たちが幸せならそれでいいかな?と思っている。
もちろん、それは兄ちゃんもだ。
現に今も、久遠さんの背中を見送る兄ちゃんの視線は暖かかった。
「さーってと。久遠が戻ってくるまで、僕らは先に話を進めて待とうか」
はい、これ案内図。
そういって差し出されたのは、校舎の見取り図だ。
「これは一応渡してはおくけど、一度は校内は案内してもらった方がいいね。まあ、その辺は後回しか。
それじゃ、この学園について話すよ」
足を組み、紅茶を一口飲むというなんとも様になる行動をとった兄ちゃんは、ふぅと一つ息を吐くと表情を仕事モードに変えた。
「まず、此処【聖涼学園】は知っての通り幼稚舎から大学部まである全寮制のエスカレーター式男子校だ。巷では、まあ金持ち校だとかなんとか言われてんね。
あとは、学園内の生徒たちは、閉鎖空間とか言ったりしてるらしい」
閉鎖空間。こんな都内から離れたとこにあるからか?
此処は都内に行くまで、車でも約1時間かかるほどの場所にある。
女性との接点がとれないから、閉鎖…なのかな。
「三人が編入するクラスは2ー5だよ。担任は……お、麻宮くんか。よかったなあ」
麻宮先生って人が担任か。
あとで此処にも来るから、ちゃんと挨拶するんだよ
と、ニコニコ笑う兄ちゃんは俺たちに諭すように言う。
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