2nd

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「理事長、お持ちしました」 「お、サンキュー。はい、くうちゃん、悠太くん、真人くん」 礼儀正しく何かを理事長に手渡した久遠さん。理事長はそれを受け取ると俺たちに配りはじめた。 「……… 何、これ?」 「カード?っすか」 『Seiryo』と金字でロゴの入った緑のカード。裏表と眺めていると、テーブルに肘を着いて手を組んだ理事長がそこに顎を乗せて頷いた。 「うん、そうそう。端的に言っちゃうとカードだよ。カードっていっても少し特殊でこの学園内での支払いだけでなく、寮の鍵としても使うからね」 という訳で。無くしちゃダメだよお? 馬鹿にしたような笑顔に思わず手を出しそうになったが、予想外の人物がずいっと出てきたので任せることにした。 「優空(ゆう )」 久遠さんが静かに兄ちゃんを呼ぶと、兄ちゃんは身体を大きく震わせぎこちない動きで久遠さんを振り返る。 何もいわず笑顔で威嚇する久遠さんに、兄ちゃんが何も言えずに黙っていると、再び久遠さんが呼ぶ。 優空、と。 「くっ、くくく久遠っ?」 「三人を揶揄ってないで、さっさと、話を進めなさい」 「は、はい!」 口を開いた久遠さんは笑顔のまま厳格な声で、有無を言わさず兄ちゃんを促す。笑顔といっても目が笑っていない。 多分、恐さは半端無いだろう。 「でっ、では話を戻します…」 ちらちらと、久遠さんの顔色を伺いつつ自ら脱線させた話を戻す兄ちゃんは何故か敬語。 「このカードはっ、無くすと再発行はできますが、発行にかかる時間は長くかかります! とくに三人のは、この理事長室にいつでも遊びに来られるよう特別なものなので絶対に無くさないようにっ…!分かった?」 マニュアルを読んでいるかのような途中までの勢いはどこへやら。確認を込めた、分かった?は酷く弱い響きだった。 しかも、遊びに来られるように特別にしたって……。 職権濫用、公私混同もいいとこだ。見ろ、悠太や真人だって呆れてるじゃないか。 隣に座る苦笑いの友人二人を目で捕らえて、大きく息を吐いた。 .
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