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「わ、ちょっ、兄ちゃん!」
「え、え、え?」
「うわわわっ!」
俺たち大パニック。
俺は慣れてはいるけど勢いに驚き、悠太と真人は抱き着かれたことに驚いている。
「やーっ、皆かあわいいなあ。弟がいっぱいだよ」
ニコニコとご満悦顔の兄ちゃんは、俺たちを抱きすくめたまま離してくれない。とゆうか、さらにぎゅっと抱き着いて来る。
ちょっ、ちょっ、ちょっ!苦しいからっ!
ぐい、
「ぅおわあ!?」
どさっ
ん?助かった…。何が起きたんだ?
息も切れ切れに兄ちゃんを見ると、そこには不機嫌そうに顔を歪めた久遠さんに衿首を掴まれたままソファに沈んでいる姿があった。
「く、久遠?」
びっくりしたように襟首を掴んでいる相手に呼びかけるが、久遠さんは手が出てしまったことに驚いているのか、バツが悪そうに手を離して顔を背けた。
「くっ…、あははっ」
「なっ…何笑ってるんですかっ」
いきなり笑い始めた兄ちゃんに、久遠さんが顔を赤らめて噛み付く。
ところが、兄ちゃんはそんな久遠さんではなく俺たち三人を見ていたずらっ子のように口の端を持ち上げた。
「さっきの質問に答えるよ。俺は至って普通のノーマルだ。ある一人を除いて、ね?」
一人称を僕、から、俺、に変えた兄ちゃんは仕事から素の状態にスイッチを切り替えたみたいだ。
一人?それって、
何となく誰のことだか分かって、ちらりと久遠さんをみたあとに兄ちゃんを見れば、口の端を吊り上げたままニヤリって笑ってた。
うわあ、悪い顔。
「空司、ご明察だ。俺が唯一愛してるのは、」
「わっ」
言葉を切って、久遠さんの手を掴み強引に、でも優しく腕を引いて久遠さんを胸に抱き留める。
「生涯こいつだけ」
狼狽える久遠さんの頭と腰を腕でとらえてから、ちゅ、と軽く口づけた。
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