2nd

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「それではそろそろ時間になりますし、教室に行きましょうか」 三者三様、それぞれが返事を返して扉に向かう。 頭を下げた麻宮先生が扉をくぐったところで、兄ちゃんに呼び掛けられ三人で振り返る。 「放課後、もう一度この部屋においで。 脱線しすぎたせいで、説明があまりできなかったしね。まだまだ話さなきゃならないこともあったんだ」 苦く笑って言う兄ちゃんだったが、この五人の中で一番話を脱線させていたのは、間違いなくこの人である。 「りょーかい」 だが、そんなことを口にすることさえ億劫な俺は口を閉じた。 「それと、この部屋でのことは他言無用だよ」 いいね?と口元に人差し指を当て魅惑的な色気を放つ実の兄にドキリとしてしまい、慌てて頷いて室内をあとにした。 この部屋での、ということはつまりは( キス)の。 。 外で待っていた先生に、三人して真っ赤になっていることを尋ねられたが適当にごまかして、教室へと急ごうと促しておいた。 ***** 教室へ向かう途中の廊下を歩いていたところで、麻宮先生が口を開く。 「そういえば三人とも、学園内は案内してもらえました?」 「あ、集会とかの準備があるらしくて、とりあえず理事長室までは」 「集会?」 俺の言葉を聞いた麻宮先生は、足を止めて怪訝そうに俺たちを顧みた。 「はい」 「えっと……?ちなみに、三人は誰に理事長室まで連れていってもらったの?」 「生徒会副会長の……確か名前は柳恩寺 奏先輩、だっけ?」 悠太が首を傾げて俺を見るので、それに頷いて見せると今度は麻宮先生が首を傾げて前を向き歩き出した。 「柳恩寺くん……?おかしいなあ。 向坂くんに迎えを頼んだんだけど、三人とも見なかったかな?」 そういわれると、次に怪訝そうにするのは俺たちの番。 「向坂くん?」 「あれ?正門までは行ったと思うんだけど。合流しなかったのかな」 正門と合流。 この二つで導き出されるのは、例の前髪の長い男。 「ああ……あの前髪が目元までかかってる人っすか?」 「うん、そうそう。…ってことは会いはしたんだね」 「はい、まあ……。けど、確か奏先輩が案内を変わるからって…何処かに行っちゃいましたね」 「なるほど、ね。なら、教室かな? 君たちの案内は、向坂くんにお願いするとしようか」 独白のように呟いて、先生はもうすぐ着くからね、と微笑む。 .
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