2nd

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******** 前を歩く麻宮先生が、一つの教室の前で止まる。 中からは始業前特有の賑やかな声。 「此処が今日から君たちが授業を受けるクラス。二年五組だよ。 僕が先に入るから、声をかけたら入ってきてね」 ちゃんと呼ぶから。 先生はそういって、ざわざわ騒がしい教室に入って行った。 そうすると、椅子を引く音や机の音がしてざわめきは無くなる。 「ところで。誰から入るんだ?」 手のひらにのの字を書いていると悠太がぽつりと言う。 えっ、と悠太を見上げると悠太は頭上に疑問符を浮かべる。 「や、だって三人で一斉に入るわけにはいかないだろ」 そりゃごもっとも。でも、そんなことちっとも考えてなかった。 けど、最初なんてヤダ。一番緊張しそうだし。 沈黙。 「やっぱここは一番緊張とかしなそうなマサだ、」 「やだ」 ばっさりと悠太の申し出は敢え無く却下。 再び沈黙が。 中からは話を進める先生の声が聞こえて、無条件に気持ちが駆り立てられる。 「よーっし、じゃんけんで決めようぜ。文句なしの一本な!」 悠太の無難な案は今度は通り、俺と真人は頷く。 「うっしゃ!そんじゃあ、最初はグー。じゃんけんぽい!」 勝敗はすっきり一回でついた。 「三人とも、中に入ってください、て。何かあったの?」 がらがらと扉を開けて顔を覗かせた先生は、廊下で繰り広げられている異様な光景に目を丸くする。 沈んだ様子で膝を抱える悠太の肩を、慰めるように抱く俺と、それを呆れたように見下ろす真人。 先生が目を丸くするのも道理である。 .
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