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前を歩く麻宮先生が、一つの教室の前で止まる。
中からは始業前特有の賑やかな声。
「此処が今日から君たちが授業を受けるクラス。二年五組だよ。
僕が先に入るから、声をかけたら入ってきてね」
ちゃんと呼ぶから。
先生はそういって、ざわざわ騒がしい教室に入って行った。
そうすると、椅子を引く音や机の音がしてざわめきは無くなる。
「ところで。誰から入るんだ?」
手のひらにのの字を書いていると悠太がぽつりと言う。
えっ、と悠太を見上げると悠太は頭上に疑問符を浮かべる。
「や、だって三人で一斉に入るわけにはいかないだろ」
そりゃごもっとも。でも、そんなことちっとも考えてなかった。
けど、最初なんてヤダ。一番緊張しそうだし。
沈黙。
「やっぱここは一番緊張とかしなそうなマサだ、」
「やだ」
ばっさりと悠太の申し出は敢え無く却下。
再び沈黙が。
中からは話を進める先生の声が聞こえて、無条件に気持ちが駆り立てられる。
「よーっし、じゃんけんで決めようぜ。文句なしの一本な!」
悠太の無難な案は今度は通り、俺と真人は頷く。
「うっしゃ!そんじゃあ、最初はグー。じゃんけんぽい!」
勝敗はすっきり一回でついた。
「三人とも、中に入ってください、て。何かあったの?」
がらがらと扉を開けて顔を覗かせた先生は、廊下で繰り広げられている異様な光景に目を丸くする。
沈んだ様子で膝を抱える悠太の肩を、慰めるように抱く俺と、それを呆れたように見下ろす真人。
先生が目を丸くするのも道理である。
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