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「委員長でいいですよ。…先生がああ言うから案内はするけど、極力自分たちで早く慣れてくださいね。それに…俺に関わるとろくなことないですよ」
早口で告げられ、さっさと踵を返してしまった向坂…改め委員長を見て唖然とする。
何なんだ、今のは…?
遠回しに物凄く拒絶された気がする。
それにろくなことないって、なんだ?
後ろの二人を見ると、俺と同じように唖然としていた。
せっかくの美形が台なしなくらいの、間抜け面だ。
はて。この二人はどうしたものか。
「あーあ。相変わらずだなあ」
顎に手を宛て考え込んでいると、悠太と真人の後ろから声が聞こえてきた。
そちらを見遣ると、そこには落ち着いた茶髪の生徒とダークブルーの髪の生徒がいた。
声をかけてきたのは、どうやらダークブルーの髪の生徒のようだ。
「相変わらずって?……ああいや、それよりそっちは?」
悠太が気を取り直したように、首を傾げる。
「んあ?ああ、すまんすまん。俺ぁ、安原 康太。康太でもなんでも好きに呼んでよ。
よろしくな、転校生諸君」
「俺は、喜多 凉桜。俺のことも好きに呼んでくれていいけど、名前にちゃん付けだけは止めて欲しいな」
眉尻を下げて笑うその顔は、女の子のようで可愛い。
「………お、男の娘」
「あ?マサ、なんか言った?」
「別に」
うんうん。慌ててそっぽ向く真人も可愛いな。
でも、結局真人はなんて言ったんだろ?
気にはなるけど、それよりもさっきのこの人の言葉のが気になるな。
「あの、それよりさっきの相変わらず、ってどういうことですか?」
ああ、それね。
呟いた凉桜は歩きながら話すよ、と俺たちを促し教室を出る。
「委員長のあの素っ気ない態度は今に始まったことじゃないんだよ」
凉桜が苦く笑いながら説明してくれる。
「そうそう。向坂のあの態度は、此処に来たときからだよ」
「此処に来たとき?って、委員長も転校生だったのか」
目を丸くした悠太に、凉桜は過去を思い出すように天を仰いだ。
「うん。俺は同じクラスだったんだけど中学二年の……夏休み明けくらいかな?」
とにかく、その頃から委員長はああだったよ、と。
当時を振り返っている凉桜の隣で、康太が何度も首を縦に振っている。
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