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「アイツが誰かと、必要以上しゃべってるとこなんか見たことねえしなあ」
康太も腕を頭の後ろで組んで同じように天を仰ぐ。
「そうなんですか?」
「ああ。俺と凉桜で何度か話かけたりもしたんだけど、相槌打ったりするだけでまともに会話できなかったんだよな。
挙げ句に、構うな、って怒られる始末だぜ」
やれやれ、と肩を竦める康太と困ったように眉尻を下げる凉桜。
「ここに入りたての委員長、少し荒れてたもんね。高校入る前位に落ち着いたみたいだけど、今も時々一週間くらい学校休んで外泊してるらしいって噂あるよね」
「確かにそうだな、だいたい決まった時期にさ。ああ、でも時々風紀委員長、副委員長と一緒にいるところは見るな」
「風紀委員がいるのか」
「おう。生徒会六人の風紀は幹部六人と下っ端連中十人くらいか?」
へえ、始めて知ったな。その辺のことは兄ちゃんも何も言わなかったし。聞きもしなかったな。
「下っ端って…。風紀の人に怒られるよ?」
呆れたように半目になる凉桜に、康太がひひと笑う。
「あ、そうだ。三人ともこれは忠告だけど、なるべく生徒会や風紀の幹部には近づかない方がいいよ」
ん?そりゃ風紀やら生徒会なんてのは滅多なことがなければ好き好んで近づくようなことは無いだろうけれど。
そんな俺の思いを感じ取ったのか、凉桜が苦く笑う。
「生徒会も風紀幹部も顔が綺麗な人たちの集まりだから。ものすごく人気があるんだよ。
それに生徒会に至っては親衛隊も過激だから、不用意に近づくと危ないんだ」
「親衛隊」
真人がぽつりと反芻する。
「親衛隊。つまるところ、ファンクラブだ。此処では、生徒会や風紀に限らずとにかく顔がいい奴はみんなアイドル的存在なんだ」
げんなりと話す康太。顔がいい奴、と言ったがそれはこの二人もなんじゃないだろうか。
始業式が執り行われる講堂に入ると、途端に突き刺さる視線。視線。視線。
俺以外の四人には、熱い眼差し。俺には冷たい眼差し。
特に転校生が珍しいのか真人や悠太にはとびきりの視線が送られている。
自己主張が激しい人たちだ…。
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