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『電車入りまーす。』
一一一一チ-ンチ-ン‥
先頭にある金色の鐘が揺れる。
赤ん坊を抱えた赤い着物を着た
女の人の後ろに並び、電車に乗り込むと
埃っぽい向かい合わせの椅子に座る。
小さな窓から覗く
何億という星空を眺める。
「何処へ行かれるとですか?」
少し間を開けて座った、赤い着物の女性が
話し掛けて来た。
「僕は、千代に行こうかと…」
「一緒ですね。お見舞いですか?」
「あぁ、はい。友達、心臓が悪くて…」
「…私の子もなんです。と言っても、もう息を引き取ってるんですけどね…」
「………触らせて頂いてもいいですか?」
「はい…」
触った赤ん坊の頬は冷たくも
柔らかかった。
「…お名前は?」
「コウタです。」
「コウタ君…。僕がお見舞いに行く友達も宏太って言う名前なんです、」
「そうですか…。宏太君、はよ元気なるといいですね、」
「…はい、」
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