僕が食事を断る訳

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** 外の雪でも降りそうな冷たさに比べたら家の中は暖かい。 しかし、人がいるはずの家としては些か寒すぎた。 「ただいま」 “家族”からの返事はない。 暗い玄関を入って、リビングの戸を開けると、ソファーに丸まる猫の姿が見えた。律儀に、テーブルの上には、卵が置いてある。 「……ごめん寝てた」 本来なら食事当番であるこちらが謝るべきを彼女は先手をうったように謝った。 学校であれだけ理不尽に扱われても家では顔にもださない。 全く………いい妻を持ったよ。 苦笑すると、まだ制服姿の妻にコートを掛ける。 「暖房ぐらいつけろ。すぐ支度するから」 これが、食事を断る理由。
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