2 傷つけたくないのに

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「遙さん、昨日桃丘中学(ピン中)の厚木が退院したらしいですよ。 狙われてるから、気を付けて下さいね」 後輩の三崎はどこから仕入れて来るのか、いつも確かなネタを提供してくれる。 元々は大胡のツレだったのだけど、太郎とオレはかなりコイツが気に入っていた。 ヤンキーにありがちな年功序列をちゃんと知っていて、こんなオレにでも敬語を使ってくれる。 「アイツ、結局骨折でもしてたの?」 2週間くらい前、オレは太郎と歩いていたら、いきなり因縁をつけられて、喧嘩になってしまった。 どうやらピン中では、魔怒が気に入られてないらしい。 オレらは、いつでも喧嘩を買う準備はあるけど、基本は自分たちからふっかけないようにしてる。 「さあ、そこまでは。ただ、かなり遙先輩の事恨んでるみたいですよ」 「わかった。気をつけるよ」 せめて顔を合わせないようには。 でも、向こうがしかけてきた場合は仕方ないよな? 「言うだけ無駄だって、三崎。 遙くんが魔怒の中で一番喧嘩ぱやいんだから」 クスクスと忍び笑いをしながら、大胡は楽しそうにしている。 大胡もオレや太郎とおなじ街で育った。 ルックスからしても、かなり厳ついヤンキー小僧だ。 太いボディピアスを耳はもちろん、唇にも二つしている。 喧嘩もそんなに弱くないけど、なにより凄いのがバイクの運転テク。 オレや、太郎でもかなわないんじゃないか?と思う程凄いライティング。 「オレもそう思ったけど、一応耳に入れとくべきだろ? それに、もうじき中間が始まるから、オレ一緒に行動できないし」 三崎は魔怒の中でも異色で、コイツがメンバーに顔を見せる事はほとんどなかった。 集いがあっても、三崎は参加しない。 もちろん、ソレを本人が望んでるからだ。 三崎にとって、魔怒よりも大切なモノがある。 親や、勉強。 だけど、魔怒には三崎が絶対に必要だった。 三崎の操るパソコンや、携帯モバイルの力はオレらバカには到底使いこなせない。 それと、異常なまでの情報力。  この二つを魔怒は三崎から得ている。 例えば、何かあれば、すぐにメーリングでみんなにメールを送ったりとかもできるみたいだ。 そこに特別な着メロまでつけて、わかりやすくしてくれる程の仕事ぶり。
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