1 再会

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「もう一度だけ言う。おいで、セレ」 冷たい目を私に向けながら、ドゥナ様が再度私に手を差し出す。 わざわざ『もう一度だけ』と言ったからには、おそらくこれが穏便にすませられる最後のチャンスだ。 だけど、この手を取れば私はまた――――。 「この村の人間も災難だな。明日から全員生活が立ち行かなくなるとは」 私がぐずぐずと悩んでいる間に、痺(しび)れを切らしたドゥナ様が手を引っ込めて、冷酷に言い放った。 その台詞に私は青ざめる。 だけど、何も知らない牧師様はただただ首をひねるばかりだ。 「失礼ですが、どういう意味でしょうか?」 「言葉通りの意味ですよ」 「や……やめてください!」 たまらず、私は牧師様の陰から飛び出した。 「お願いします。……どうか、それだけは!!」 このままでは現実になるであろう事柄を想像し、恐怖に涙しながら、みっともなくドゥナ様に縋(すが)り付いて懇願(こんがん)する。  
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