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「セレさん!? いきなり何を」
牧師様が面食らった様子で私の肩へ手をやる。
牧師様が私の心配をしてくれていることは痛いほどよく分かる。
おそらくドゥナ様が何者であるか分かっても、心優しい牧師様はきっと最後まで私のことを守ってくれる。
でもだからこそ、私はもうここに居てはいけない。
「ごめんなさい。……牧師様」
私は心配してくれている牧師様の手をそっと肩から退けた。
その光景を冷ややかな目で見ていたドゥナ様が確認するように私に声を掛ける。
「大人しく邸に帰るんだな?」
「……はい。だからっ、どうか、先程の言葉は」
「分かった。撤回しよう」
その言葉にひとまずホッと胸をなで下ろす。
そして私は、何がなんだか分からないといった様子の牧師様に向き直って頭を下げた。
「この半年間、本当に……ありがとうございました」
「セレさん。……彼はいったい何者なのですか?」
まるで得体が知れないものを見るような目つきでドゥナ様を見つめる牧師様に、私は彼の正体を明かした。
「この方はエデュス家のご当主、ドゥナ・アンゲル・エデュス侯爵様です」
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