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ドゥナ様の様子を窺(うかが)いたいけど、怖くて顔を上げることが出来ない。
縮こまった身体をさらに小さくして、これ以上ドゥナ様の気分を害しないように努める。
するとドゥナ様が急に私の左手を取った。
「忘れないうちに渡しておく。……大切な物なんだろう?」
そう言って、私の薬指に指輪をはめた。
その指輪は銀製で小さなダイヤが一粒はめ込まれている。
「これっ! ……どうして、ドゥナ様が……?」
ドゥナ様が持っているはずのない指輪を持っていたことに私は目を丸くする。
だってこの指輪は、私の両親の形見で、半年前ドゥナ様のもとから逃げ出した時に、お金に困って売ってしまったのに。
「セレの足取りを追っている時に偶然見付けて、買い戻しておいた」
態度こそ素っ気ないが、これといって特徴のないありふれた指輪を私の大切な物だと分かって、しかも買い戻してくれていたのかと思うと、嬉しさが込み上げてくる。
だから私は、ドゥナ様のことが好きだった。
その分かりづらい優しさが好きだった。
たとえドゥナ様に嫌われていても、私の気持ちは今でも好きのまま変わらない。
初めてドゥナ様と出逢ったあの日から、ずっと――――。
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