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「あの……おじ様。本当に私が、その……おじ様のお邸に行っても……?」
「何を今更」
「だって、おじ様と私は……その、親戚でもなんでも……」
「私にとって君の父上は大切な友人だった。その友人の娘であるセレちゃんは私にとっても実の娘のような存在だ。だから何も気兼ねする必要はない」
まるで幼子を宥(なだ)めるような優しい口調で、おじ様が私に語りかける。
「それに息子のドゥナもセレちゃんのことを歓迎しているし、なんの心配もいらないよ」
「……息子?」
「ああ。セレちゃんには話したことがなかったね。私には今年17歳になるドゥナという息子がいるんだよ」
「……おじ様に、似てるんですか?」
「いや。ドゥナは母親似でね。社交界の花と謳(うた)われた私の亡き妻に生き写しなんだ」
「奥様は、その……いつ亡くなられて……?」
「ちょうど5年前にね」
これまで笑顔だったおじ様の表情が悲しげに曇る。
それでも私に心配させまいとするかのように、すぐ穏やかな笑みを浮かべた。
「すまない。湿っぽくなってしまったな。……それよりも、たしかセレちゃんは今年で14歳だったね? ドゥナとは歳も近いし、きっと話も合うだろう。出来れば実の兄のように慕ってくれると嬉しいのだが」
「はい。……私、一人っ子だから、その、兄弟に憧れてて……だからその、嬉しいです」
ようやく私が笑顔を見せると、おじ様も安心したように微笑んだ。
正直にいうと、やっぱりまだ不安な気持ちは残っている。
それでも私は、おじ様のことを信じよう。
そう心に決めた。
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