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邸内は、美しい絵画や彫刻などの美術品で彩られていた。
私はそれらに目を奪われながらも、お二人から離れないよう注意しつつ、大理石の廊下を進む。
「フリッツ。ドゥナはどうした?」
私の前にいるおじ様が先んじて歩くフリッツさんに声を掛ける。
声を掛けられたフリッツさんは一旦歩みを止め、おじ様と私の方へ向き直り、やはり表情ひとつ変えず軽く頭を下げた。
「はい。先程執務室にいらっしゃったドゥナ様にお声をお掛けしましたので、そろそろこちらに見えられるかと」
「そうか」
先頭を歩いていたフリッツさんが立ち止まったため、自然と歩みを止めていたおじ様が呟く。
そして再び歩き出そうとしたその時に、廊下の先から凜(りん)とした声が聞こえてきた。
「お帰りなさいませ。父上」
とっさに声のした方へ目を向けると、光り輝く何かが眩しくて、私は思わず目を細めた。
そして、改めて廊下の先を見つめると、光り輝く金色の髪をした人物がこちらに向かって歩いて来るのが分かった。
段々、その人物の姿がはっきりとしてきて、私はひとり息を呑んだ。
光り輝く金の髪。
雲一つない空のように青く澄んだ瞳。
まるで先程拝見した絵画や彫刻の人物が実体化して目の前に現れたのではないかと錯覚するほどの美貌。
美しい。
それ以外に言葉が見付からない。
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