2 出逢い

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「あ、あの……私……」 『ありがとうございます』 『私はセレ・イステラ・グリジットと申します。初めまして』 『これからよろしくお願いします』 言いたいことは泉のように湧き出てくるのに、私はどうしてもそれを口から発することが出来なかった。 きっと彼は、おじ様の後ろに隠れたまま口ごもる私を見て呆れている。 そう思うと恥ずかしくて、顔も上げられず俯いているしかなかった。 私の言葉の続きを待ってくれていたのか、しばらく彼からの視線を感じていたけれど、私が何も言わないので、また彼の方から話し掛けてきてくれた。 「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はドゥナ・アンゲル・エデュスと申します。どうぞ心安く、ドゥナとお呼び下さい」 失礼な態度を取り続けたのに、それでも優しく話し掛けてくれる彼――ドゥナ様に、私は心が温かくなっていくのを感じた。 少し緊張が解(ほぐ)れた私は、ドゥナ様の笑顔に誘われるようにおじ様の陰から出て彼の前に歩み出た。 「あの……。初めまして。セレ・イステラ・グリジット……です」 笑顔が少し硬かったかもしれないけど、ちゃんとドゥナ様の顔を見て挨拶をすることが出来た。
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