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お父様が亡くなり、おじ様に引き取られてから、早いもので3ヶ月が経った。
初めは勝手の違う邸での生活に戸惑うことも多かったけれど、最近ではなんとかこの邸の雰囲気にも慣れ、使用人さん達とも普通に言葉を交わせるようになった。
だけど、やっぱり声を掛ける瞬間は勇気がいる。
それでも、私にしたらだいぶ進歩したと思う。
「セレちゃん。そろそろここでの生活にも慣れてきたかな?」
赤ワインの入ったグラスをテーブルに戻しながら、おじ様が隣りの席の私にこう尋ねてきた。
私は心からの微笑みをおじ様へと向ける。
「はい。……皆さん、良くして下さって……」
「それは良かった。何か困った事があったら、いつでも相談においで」
「はい。……ありがとうございます」
おじ様の心遣いに、私はますます嬉しくなる。
だけどたったひとつ、気掛かりな事が――。
私はチラリとおじ様の正面の席に座って食事をしているドゥナ様へと目を向けた。
ドゥナ様はにこやかに笑いながら、私とおじ様の会話を聞いている。
だけど、ドゥナ様は初めて会ったあの日から、何故か私の事を避けているみたいで、この3ヶ月間めったに顔を合わせることはなかった。
今こうしてドゥナ様と一緒に食事をしているのも、おじ様が配慮して下さったおかげだ。
エデュス邸へ来た当初、私はひとりで食事をしていた。
もともとおじ様の邸では、それぞれ好きな時に個別で食事を摂っていたらしいけど、食事は常に家族と一緒に摂ってきた私にとって、ひとりきりの食事は酷く味気なくて、悲しかった。
そのことを何かの折りにおじ様へ伝えた所、おじ様が「これからはなるべく、私とドゥナと一緒に3人で食事をしよう」と提案して下さり、それからは多忙な時と外出時以外、私とおじ様とドゥナ様の3人で食事をするようになったのだ。
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