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えっ!?
ドゥナ様と。
ドキンと心臓が跳ねるのを感じながら、私はこっそりとドゥナ様の顔を覗き見た。
ドゥナ様は相変わらずの美しいお顔で、穏やかに笑っている。
だけど、ほんの一瞬、その笑顔が引きつったように見えたのは、気のせい?
「父上。大変申し訳ありませんが、なにぶん私もまだこの邸に不慣れなものですから、とても満足のいく案内が出来るとは思えません。セレ嬢に失礼があってはいけませんから、案内は執事のフリッツに任せてはどうでしょう? 彼なら、この邸のことはなんでも知っていますし、私よりも適任かと」
「ふむ。言われてみれば、ドゥナも邸に帰ってから、まだ日が浅いしな」
「はい。それに私では花好きのセレ嬢の質問にも満足に答えることが出来るかどうか……。ここはやはりフリッツに任せる方が良いかと」
「うむ。そうだな……。ドゥナの言う通り、案内はフリッツに任せるか」
おじ様が顎髭を指で触りながら、そう結論付けた。
だけど、私の意識は別の場所にいっていて、まったく頭に入って来ない。
この邸はドゥナ様のご生家のはずなのに、なんで不慣れだなんて?
それにおじ様も、ドゥナ様が邸に帰って来てまだ日が浅いと言っていたし、いったいどういうことなんだろう?
何か特別な事情でもあるのだろうか。
だけど、それなら私のいる前でそんな話はしないよね――?
「……あ、……あの」
少し躊躇(ためら)ったけど、私は思い切ってお二人に聞いてみることにした。
「えっと、その……ドゥナ様が、その…………最近まで、どちらに……?」
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