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緊張して、もはや自分でも何を言っているのか分からない。
どうしよう。
おじ様もドゥナ様も怪訝な顔をして、私のことを見てる。
だけど、見られていると思うと、なおさら緊張して言葉が出て来ない。
私が赤くなって俯いていると、ドゥナ様が「もしかして」と優しく声を掛けてくれた。
「私が『この邸には不慣れ』だと言った事が気になられたのでしょうか?」
俯いたまま、コクコクと首を縦に振ると、ドゥナ様が耳に心地良い声音で私の疑問に答えてくれた。
「実は長年、全寮制の学校で学んでおりまして、卒業後こちらの邸に帰って来たのですが、それからまだ一年ほどしか経っていないんですよ」
「ドゥナは7歳で入学してから、16で卒業するまで、ずっと学校の寮で暮らしていてね。セレちゃんは、エストフォーレという学校は知っているかな?」
「はい……」
エストフォーレといえば、この国で知らない人はいないというぐらいの超名門校だ。
時には、王族の方が籍を置かれることもあるため、よほどの家柄でないと入学を許可されないと聞いていたけれど、さすがは名門エデュス家。
凄い。
「これで疑問は解けましたか?」
声を掛けられ、思わず顔を上げると、にっこりと笑ったドゥナ様と目が合い、恥ずかしさでまた下を向く。
「はい……。ありがとう、ございました」
「それでは、私はまだ仕事が残っていますので、お先に失礼させて頂きます」
おじ様と私に一礼すると、ドゥナ様は優雅な身のこなしで去って行った。
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