3 同居

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ドゥナ様が去って行った扉を名残惜しく眺めていると、不意におじ様が独りごちた。 「どうやらドゥナにも、やっとエデュス家の嫡男としての自覚が出て来たようだな」 どこか安心したようなその声に、私は思わずおじ様の方へ視線を向ける。 思った通り、おじ様は嬉しそうに微笑んでいた。 私の視線に気付いたのか、ご機嫌な様子のおじ様が私を見る。 「失敬。少々嬉しくて、つい声に出てしまったようだ」 「あ、いえ……」 そう言って軽く目を伏せたけれど、やっぱり気になったので、思い切って訊いてみる。 「あの……。ドゥナ様が、その……どうかしたんですか?」 「うん?いや、その、恥ずかしい話なんだがね」 顎髭(あごひげ)に手をやり、そう前置きしてから、苦笑いを浮かべたおじ様が話し始めた。 「ドゥナはエストフォーレに通っていた九年間に、たった二回しか邸に帰って来なかったんだよ」 「……それは、全寮制だから……では?」 「いや。新年や長期休暇の時は、申請をすれば実家に一時帰宅する事が許されているんだが、ドゥナは帰って来なかった。邸に帰って来た二回のうち一回は、ローザの――ドゥナの母親の葬儀のためだったしな」 おじ様が悲しそうにそっと目を伏せる。   ドゥナ様のお母様ということは、おじ様の奥様よね? おじ様。こんなにお辛そうな顔をされて。……きっと、もの凄くローザ様の事を愛してたんだ。 「それなのにドゥナときたら、ローザの葬儀が終わるとさっさと学校の寮へ戻ってしまい、結局それから卒業するまで一度も邸へは帰って来ずじまい。しかもやっと帰って来たかと思えば『士官学校へ入り直して軍隊に入りたい』などと言い出す始末だ。更には、エデュス家と縁を切りたいなどと世迷い言まで……。まったく、いったい誰に毒されたのだか」 さっきまでの沈痛な面持ちから一転、目をつり上げ、語気鋭く一気にまくし立てていたおじ様が、最後盛大なため息を吐く。
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