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まさか、そんな……。
自分の目に映るものが信じられず、何度も目を瞬(しばたた)かせる。
だけど、目に映る光景は何も変わらない。
よく見知った男の人が教会の入口付近で立ち止まったまま、まっすぐ私を見つめている。
日の光を集めたような輝く金の髪。
雲ひとつない青空を映したような澄んだ青い瞳。
まるで宗教画から抜け出してきたのかと息を呑むほどに美しい容貌。
その彼の射抜くような視線に、私は目を逸らすことが出来ない。
どうして?
何故、ここに?
言いたいこと、訊きたいことが溢れてくるのに、唇が乾いてうまく声が出ない。
「久しぶり。セレ」
懐かしい彼の声が、私の名を呼ぶ。
それだけで私の体はビクッと反応してしまう。
嬉しくて泣きそうになる半面、彼に対する恐怖心が頭を掠めていく。
「ずいぶん捜したよ」
その優しいながらも咎めるような口調が、私の恐怖心をさらに掻き立てる。
話し掛けながら、徐々に近づいてくる彼に対して、距離を取らなければいけないと思うのに、足が床に縫い付けられたみたいに動かない。
そうこうしている間に、彼は私の目の前までやって来た。
間近で見る彼の青い瞳には、私への憎悪が透けて見える。
「さあ、おいで」
そう言って、彼が私に手を差し出す。
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