14人が本棚に入れています
本棚に追加
セレ・イステラ……エデュス?
彼――ドゥナ様が言った私の名を反芻(はんすう)する。
セレ・イステラ・グリジットではなく、セレ・イステラ・エデュス?
つまり、まだ私との縁は切れていないということなの?
ドゥナ様のもとを去って、そろそろ半年。
とっくに私なんかとは離縁して、新しい妻を娶っているかもしれないと思っていた。
だからまだドゥナ様と繋がっていたということが、純粋に嬉しい。
もしかしたら、ドゥナ様も私のことを――。
「彼の話は本当なのですか?」
牧師様の声で、私は甘い夢から覚めた。
これまでも都合のいい夢をみて、そのたびに何度も絶望してきたのに。
私は苦い現実を噛み締めながら、牧師様の問い掛けに頷いた。
「確かに……私は、その、……ドゥナ様と、結婚……しました。だけど」
視線をドゥナ様へ向ける。
これまでの思い出を回想しながら、私は勇気を振り絞って、続きを言った。
「だけど、私は……これまで一度も、ドゥナ様の妻だと……思ったことはありません!」
泣きそうになりながらも、私ははっきりと断言した。
けれど次の瞬間、刺すような冷たい視線を感じ、私の体はビクッと震える。
最初のコメントを投稿しよう!