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「っ!!」
走り出したランナーに気づき、集中が切れた先輩投手は送球が乱れた。
明らかに打ちやすくなったコースを敵バッターは見逃さず、大きくバットを振った。
“カキーーーン!!”
ボールの芯を捕らえたバットの金属音が鼓膜に強く響いた。
いつもなら気持ちの良い音で大好きな音なのに。
この時は、血の気が引くほど不快な音に思えた。
球を打った瞬間、敵の客席側は大歓声を上げて球場を飲み込んだ。
打球はセンター前のクリーンヒット。
二・三塁ランナーは腕を高らかに上げてホームベースを踏み、打者はガッツポーズで一塁ベースを踏む。
その瞬間、ゲームセットを告げるサイレンが鳴り響いた。
そして、そのサイレンはゲーム終了と同時に――
今年、あたし達の夏の終わりを……………告げた。
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