終わった夏。

3/16
前へ
/54ページ
次へ
「っ!!」 走り出したランナーに気づき、集中が切れた先輩投手は送球が乱れた。 明らかに打ちやすくなったコースを敵バッターは見逃さず、大きくバットを振った。 “カキーーーン!!” ボールの芯を捕らえたバットの金属音が鼓膜に強く響いた。 いつもなら気持ちの良い音で大好きな音なのに。 この時は、血の気が引くほど不快な音に思えた。 球を打った瞬間、敵の客席側は大歓声を上げて球場を飲み込んだ。 打球はセンター前のクリーンヒット。 二・三塁ランナーは腕を高らかに上げてホームベースを踏み、打者はガッツポーズで一塁ベースを踏む。 その瞬間、ゲームセットを告げるサイレンが鳴り響いた。 そして、そのサイレンはゲーム終了と同時に―― 今年、あたし達の夏の終わりを……………告げた。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加