嘘つきな僕と正直な彼女。

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時刻は午後の六時半を過ぎた頃。 窓の向こうから運動部の人達の話す声が聞こえてきた。 作業に集中していた僕は、その声で集中が途切れた。 そして窓の方に目を向ける。外は真っ暗だった。 さっき見た時はまだ明るかったのに…と思ったのと同時に、もうこんな時間だったんだなと僕は思った。 一般の生徒はもうとっくに帰っている。だから校内には誰もいない。 でも僕は一人、生徒会室にいた。 何故なら生徒会の仕事をしているからだ。 「後少し…」 途切れた集中をまた戻して、僕は作業を進める。 ゴオンゴオンとストーブの灯油が燃える音と、淡々と電卓を叩く音だけが室内に響く。 僕がいま何をしているのかと言うと、会計の仕事だ。 今年壊れた物の修理費や、文化祭や体育祭と言った行事で使った経費を計算し、紙に記入して、担当の先生に提出する。 「……ハァ…。やっと終わった」 まとめた紙にホッチキスで止めて、ようやく取り組んでいた作業が終わった。 僕はグーっと両腕を前に伸ばした。 後はこれを先生に渡すだけだ。 席から立ち上がり、生徒会室のドアを開けて部屋から出ようとした。でも……。 「寒っ…!」 ドアを開けた瞬間、一斉に冷気が僕の体を吹き抜ける。 思わずドアを閉めてしまった。 やっぱり十二月の校舎は嫌だな…。 すごく冷えきってる。 温かい部屋から出たくなくなる前に、僕はすぐドアを開けて、早足で職員室へと向かった。
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