嘘つきな僕と正直な彼女。

8/12
前へ
/54ページ
次へ
「……そうかな? 別に疲れてないよ」 職員室でやりとりしてた先生と同様に、僕は笑って答える。 「………」 すると突然、楓は立ち止まり、黙って僕を見つめる。 止まった彼女に気づき、振り返った後、しまった……と僕は思った。 「ほ、本当だからさ!早く歩こ?寒いし」 「…………」 黙って見つめる彼女に僕は少し唸った後、沈黙に耐えかねて本音をもらした。 「…今日は、いつもよりたくさん仕事頼まれたからちょっとは疲れてる…かも」 そう言うと、楓はにっこりと笑った。 「あんまり無理しちゃダメだよ? 疲労で倒れるなんて笑えないんだから」 「う、うん…。ごめん…」 「何で蓮が謝るの? ほら、もうすぐ冬休みでしょ? 蓮が体壊しちゃったら一緒に遊べなくなっちゃうじゃない。 そうなったら嫌だから言っただけ」 そう言って楓は前を向いて再び歩き出した。 その後ろ姿を僕は黙って見つめ、ふとあの日の事を思い出す。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加