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たまに会えば話す関係。
仲のいい友達とまではいかない。でも他人じゃない。
そんな状態に元クラスメートのあたしたちの関係はあった。
「よっ、何してんの?」
「委員会の仕事中」
へぇ、と対して興味もなさそうに簡単に返事をする背の高い君をそっと見上げる。
「がんばれ」
と一言だけ残してそこを立ち去った。
こんな、些細なきっと君の記憶には残らないだろう会話でも、あたしにとっては特別な幸せな時間だった。
今日もいい1日だ、そんなことを1人思いながら、委員会の作業を続ける。
でも、人は満足だと思っていてもさらに幸せを求めるものだから。
やっぱりあたしももっと側に行けたら、なんて考えてしまうんだ。
ある時、なんだかよくわからないけど、遠くから君を見ていたらギューッと胸が苦しくなって、思わず君宛てのメールを書き上げた。
『好きです』
4文字の白黒の文は、容量の小さな軽いものだけど、あたしの気持ちが詰まった重いもので。
メールを作成したものの、送る勇気はあたしはまだ持ち合わせていなかった。
「好きだよ」の
文字は今でも
携帯の 保存ボックス
しまったままで
あれから数ヶ月。
まだあたしの保存BOXに送れず仕舞いのメールは残ったままだ。
いつになったら送れるんだろ、
自分の勇気の無さに苦笑しながら、大事に携帯を握る。
「何してんの?」
そんなあたしの横を君が通る。
「何でもないよ」
そういって笑いながら擦れ違う。
まだ、いいや。
でも、この想いが溢れたときは、保存BOXを開いて。
《伝えよう、短い文字に心を込めて》
fin
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