一章:欲情と入り口

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私達の母親は、私達が小学生のとき見知らぬ男に殺された。 でも、その男は当時、精神異常者だったために実刑を受けなかったらしい。 父親は、中学生のときに病気で亡くなった。 二人きりになった私と周は、親戚に引き取られて。 親を亡くした私達にとても良くしてくれたけれど、 私はなんとなく居心地が悪くて、高校入学と同時に一人暮らしを始めた。 昔、四人で暮らしていた家で―― 生活費などは親戚が出してくれているけれど、もう引き払ってあったその家は事件によって安価だったため、一時期私がバイトをして代金を払った。 高校二年生になった今年の春、同じ高校に入った周が、家に転がり込んできた。 「亜依と、暮らしたかったから」 そんなことをサラッと言って、一緒に住み始めた。 私が家を出た理由のひとつは、周だと言うのに―― 、
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