一章:欲情と入り口

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「眠れないの?」 「暑くて……。 ごめん、起こしちゃった?」 話しながら、私の隣に腰かける周。 暗がりの中、トス…という音がやけに際立って聞こえる。 僅かに速くなった、心音。 「俺も寝れなかったから」 そう言って、周は天井を見つめた。 沈黙が続き、暗闇に慣れてきた目で周を見上げると、目が合った。 周が柔らかく微笑み、それが昔と同じ、優しい表情だったから――思わず私も微笑んで。 久しぶりの穏やかな時に、張り詰めていた緊張の糸が切れて、周の肩に頭を預けた。 、
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