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古びた校舎に木の机、校庭の栗の木では蝉の合唱がはじまっていた
決まり事の様な教師の言葉に耳をかし、時より吹く風で揺れる黄ばんだカーテンを何気に眺める…
『はい!では、事故のない生活を送るんだぞ!9月1日また会おう』
そう…明日から長い休み。
しばらくの間、この学校という拘束から解放される。
教師が出ていくと、ざわつく教室…大量の宿題と大量の荷物、半ば強引に鞄に押し込み席を立つ。
『勇太くん…休みは予定あるの?』
後ろの席の七海の声…
父親の都合で数年前、東京からこの田舎町に越してきたクラスの男子が気にする存在…それが七海。
『な~んもない。七海は予定あるん?』
『あたしも、お父さん仕事忙しいから…とくに予定ないかな』
『そっか…じゃまた会うかもな』
『うん…また、その時は遊ぼ…』
『そうだな…。』
去年までは帰る道が同じなので、たまに一緒に帰っていたが、五年生にもなると次の日には必ず冷やかしが入る…
それ以来、一緒に帰る事はなくなっていた。
大量の荷物に二本の邪魔な傘が追加され、教室をあとにした。
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