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『じゃあ何か…お願いする?』
『そうだね…勇太は何お願いするの?』
『ダメだよ。内緒、ないしょ』
手を合わせ瞳を閉じると、蝉の合唱が一瞬静かになった気がした…
長めのお願いを終え目をあけると、恭介の姿はもう何処にもなかった…
バケツの中では、神様にしたてあげられた一匹の小魚が、広い海を思い出す様に円を描く。
『……そろそろ帰ろ。』
ドラム缶のわきにバケツを置き、蜩の声を耳に…家路に着く。
海は夕陽に照らされ赤く染まり、潮が満ち岩場も海水でみたされている…
時折聞こえる船の汽笛と海鳥の声が、一日の終わりを小さな港町に知らせているようだった…
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