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「…アンタは本当に魔族かい?」
ガタンと揺れて、大きな桜の木も小さくなっていく、可愛らしい老婆は細い瞳をこちらに向けていた。
「え?ええ、そうですよ」
「変わった魔族も居るもんなんだねぇ」
「変わってますかね?」
海の色が少しずつ明るい物へ、空には太陽神様が居ると言われている島が地に光を降り注ぎながらのんびりと上ってくるのだ、暖かな1日が始まる列車のヒトコマ、青年は少し困ったように笑う。
「ああ気にすることは無いよ、優しいのはアンタの良いとこだろうからね」
星浜ぁー星浜でございます、放送が到着駅までが近いことを告げる、老婆は可憐に微笑み返してはゆっくりと立ち上がった。
「優しい魔族さんや、コレはお礼だよ」
手にしていたベレー帽をぽんと彼の胸に託す、ぽかんとしつつも青年はそれを受け取った。
「角は隠しておいた方がいい、悲しいことに見た目で判断する人が多いからね」
そう残して、じゃあねと笑顔で列車を後にした。
「…ありがとうございます」
青年はまた柔らかく微笑む。
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