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だだっ広い会場に椅子が並んで、一番奥にT兄がいる。
葬儀特有な香り。
無数の花と線香の。
丁度胃の辺りが掴まれたような感覚。
急に喉が乾いた様な気がした。
手を合わせると、震えた。
もう一度遺影を見る。
ちょっと緊張したような笑顔。
(何笑ってんだよ、ばーか。)
(何死んでんだよ?)
(何で教えてくれないのよ?)
(何で会ってくれなかったのよ?)
(自分の姿を見せなくなかった?)
(治療で全快して会いに来るつもりだったのか?)
(死ぬ予定なんかじゃあ無かったんだよな?)
(最期は苦しくなかったか?)
このまま通夜が始まらなければいいと思った。
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