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塔の国と呼ばれる国の中央に位置する王宮。それを四方から守るように四つの極めて大きな屋敷がある。そのうち北方、地を揺るがすような叫び声が上がったのは早朝のことだった。
「絶っ対、嫌です!」
立派な格子をも震えさせる叫びを上げ、苛立ちを全身で表す我が子に、父親であるハクはそれを上回る怒声を上げた。
「黙らんか! ネイ、お前ももう十五になった。代々王族に遣える我ら釜淤(プオ)家のしきたり通り、兄姉は立派に役目を果たしているだろう。お前も見習いたいと常々言っていたはずだ」
「でも父様、なぜ姉上や兄上は有望な姫や王子にお仕えしているのに、俺は『愚図姫』なのですか!?」
勝ち気そうな目でハクを見返し、怒りからか白い頬を朱に染めている。
――誰に似たのだか。
そう思いつつ、ハクはその細い腕をくいと掴んで座らせる。思わず溜め息が出た。
「姫君をそのように……いいか、確かにお前は頭もまわって芸にも長けている。しかしなあ、その気性の荒さが全てを台無しにしている。お前の望む姫や皇子から声が掛からなかったのは、お前自身の責といっても過言ではない」
そう言われてなにも言えなくなったのか、ネイは唇を引きむすんで父の顔をねめつけた。
ハクは失笑してその背を叩く。
「もうすぐ起つ頃合いだ。用意せい」
「……」
すっかり肩を落として部屋を去った息子を思い、ハクは再び溜め息を吐いた。
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