序章

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パシャンッ 一際大きな水溜まりを踏んだ瞬間、世界が深い闇に包まれた。 (あれ……私…) ふわふわ、ふわふわ。 さっきまでちゃんと地面を踏みしめていた筈なのに今足は浮いている。 人っ子1人居ない漆黒の空間… それなのに不思議と恐怖は無く、逆に心地いいような感覚だった。 (……暗いなあ………何にも……見えない…) あまりの心地良さに目を閉じ、全てを諦め、何かを忘れ、闇に身を委ねた。 すると、徐々に徐々に蒼空の身体が消えて行く。 さらさらと砂のように、少しずつ無くなって行く…… そしてやがては完全に消えてしまった。 残るは蒼空の記憶の断片。家族の記憶。 蒼空は無意識に一番要らない記憶を置いて別世界へと足を踏み入れた。 ――ここは時間と空間の間―――。
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