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「…ここだな。」
妖のせいだろうか。
黒く渦巻く川の上に渡されている橋の目の前に立つと、祓は妖の気配を探る。
祓はスウッと水の中の世界に入り、波紋の出るのを待つ。
ポチャン
ポチャン
ポチャン
「複数いるな。3体だ。」
集中させていた空気をフッと緩めると、祓は煌夜と焔を振り返る。
「じゃあ1体ずつかな?」
「だな。」
煌夜と祓は短い会話をかわすと
「焔、何かあるか?」
何か気になる所は無いかと尋ねる。
焔はないよと首を振って
「属性は水?」
黒く渦巻く川を見てそう尋ねる。
祓はそんな焔を見てちょっと眉を潜めると、手の甲で焔の頭をコツンと叩く。
「聞くんじゃなくて、自分の感覚で覚えるんだ。危なくなっても俺達がいるから。」
祓は諭すようにそう言うと、今度は焔の頭を撫でる。
「頑張れ。焔なら出来るよ。」
焔は敬愛する兄に認められたのが嬉しいのか、パッと顔を輝かせて祓に笑いかける。
煌夜はその姿を見てフッと笑うと
「祓。焔君」
今度は真剣さを混ぜた声で2人に呼び掛ける。
その煌夜の声に2人もハッと川に視線を向け、裏ポケットから符を取り出して構える。
妖が来たら直ぐに対応出来るようにだ。
3人は、妖の来るどんな兆候も見逃さないようにと意識を集中させた。
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