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見上げると、今にも降りだしてきそうな灰色の空が広がっている。
鼻につく肉が焦げた臭い。ちらりと横に目を向けるとインド像くらいデカい黒コゲの物体が。
「答えろ!!」
……耳をつんざくのは女性の怒声。声の主は目の前の怖い顔をしたお姉さん。
ああ、怖い顔っていっても顔が厳つい訳じゃない。むしろ美人。なかなか美人。
しかしながら、切れ長の瞳は俺を絶賛睨み中。見るからに動きにくそうな鎧?に真っ赤なマントを羽織った彼女は非常に不機嫌である。
「貴様――何者だ?」
「……はあ」
溜息。なにがどうして、こんなことになったんだろうか。
俺とお姉さんの現在位置は、背が踝(くるぶし)ぐらいまでしかない草が生い茂る草原。見渡す限り草。見たことのない、青色の草。
ただ例外として、俺の立っている目測半径10メートルは、茶色い地肌がこんにちはと顔を出している。
この場所にも、数分前までは名も知らない草が生えていたんだが……
「言葉が解らないと言う事は無いだろう? さっさと答えろ」
残念ながら、今の俺に草の心配をしてやる余裕なんて無い。
怖いお姉さんが、俺に“あるモノ”を向けていらっしゃるからだ。
自慢じゃないが、これが銃やナイフだったなら俺は驚きやしない。
生まれ育って十七年。銃やナイフを向けられた経験は、両手両足の指じゃ足りないぐらいにある。
……うん、ホントに自慢じゃないな。
まあそんな訳で、俺は他の奴等よりもけっこう肝が座っていると自負していたりする。
「……なんの冗談ですかねぇ」
小さく呟く。
いやな、流石に“炎の剣”なんて代物を向けられたのは初めてだ。
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