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沖田さんは敷き終わっていた布団の上に座る。
そこで、一つ忘れていた事を言う。
「沖田さん、お願いがあるのですが…」
「お願い?」
沖田さんが聞き返し、私は頷く。
「何があっても、刀を持ち歩かないで下さい。絶対に、人を斬らないで下さい」
予想通り、沖田さんは目を丸くした。
「両方とも法に障ります」
「法?」
「法律です。法度と考えて下さい」
沖田さんは難しい顔をする。
「人を斬るなっていうのは分かるけど…」
「分かっています。刀は武士の魂ですものね」
「…別に、武士なんて立派な者ではないけどさ」
困惑の表情を浮かべる沖田さんに、私は頭を下げた。
「お願いです。銃刀法違反で捕まってしまいます。お願いします」
「わあぁぁっ!止めてよ、分かったから」
土下座に近かった私の体を、沖田さんは肩を掴んで起こさせた。
そして、二本の刀を私へ差し出した。
「仕舞っておいて、くれる?」
「分かりました。ありがとうございます」
私は刀を受け取って頭を下げた。
その後、沖田さんは布団に、私はベッドに入り、眠りについた。
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