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「清村さん」
ふと私は賀茂のお嬢様に名前を呼ばれてそちらを見た。
何か、一瞬ぞっとするくらいの黒い笑顔を向けられた気がした。
「気を使ってくださってありがとう。また、教室でね……」
それと同時に車の窓が閉まった。
車はゆっくりと発進する。
「なんなのよ……」
私は大きくため息をついた。
何か、具合悪くなってきた……
新学期早々あのお嬢様の顔を見れば、そりゃ具合も悪くなるか……
私は気だるさと、謎の頭痛に額を軽く押さえると一歩を踏み出した。
でも、この体調の悪さはどうやら本格的なようだ。
軽い眩暈が私を襲い、足元が正直おぼつかない。
「嘘でしょ……さっきまでなんともなかったのに」
私は辛くて歩けなくなってしまった。
体に何かが覆いかぶさってるみたいに重い……
一度立ち止まって、息を整えて直す。
そうしてもう一度一歩を踏み出したら、まるで重いものを背負ってバランスを崩したように前のめりになってしまった。
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