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告白を受けてから、僕達は付き合い始めました。虚言ではありません。真実です。
自分みたいなちっぽけな人間が付き合っていいのかと苦悩しましたが、付き合っているので仕方ありませんでした。
当然引け目は感じています。完璧超人の彼女に対し、彼氏である僕は雑魚です。完全に釣り合っていません。嬉しい反面、負の感情が僕を襲いました。
何故自分を選んだのか。高崎さんならもっと良い男性も簡単に手に入れられるのに……。どうして自分が……。自分みたいな人間が……。
隣に居る限り、この感情は消えることは無いでしょう。けど僕は離れませんでした。というよりも、離れられませんでした。
高崎さんの隣という、憧れの居場所は、居らずとも、持っているという事実だけで幸福感に満たされるのです。離れられませんでした……。
友人は僕に言いました。
何でお前なんだよ。俺はお前を面白いと思ったことはないぞ。良い奴なんだろうけど、彼氏にする程でもないだろ。女には滅法駄目だし。
裏があるんじゃねぇか? あんまり浸ってると、別れる時ショックも大きいから気を付けろよ。
彼なりの注意なのか、ただのやっかみか、それはともかく同意見でした。僕の何処を好きになれたのか、検討もつきませんでした。
そういえば、大学で僕のあだ名が広まりました。一雄という名をもじってか、カス男という不名誉極まりないあだ名です。
全く……的を得ているから困ります。
付き合い始めたといっても、関係は濃くありませんでした。お互いバイトをしているので、週に二、三遊ぶか遊ばないかくらいでした。
遊ぶといってもポンコツな僕は、話題を作るのは勿論、気の利いた相槌すらもうてませんでした……。危機感に苛まれました。直ぐに嫌われる、と。
怖くて堪りませんでしたが、高崎さんは優しかったです。嫌な顔一つせず優しく接してくれました。
もちろん、好意が万倍になりました。
付き合い始めて一ヶ月。高崎さんの住むアパートにお呼ばれしちゃいました。てへ。綺麗で片付いており、想像通りの部屋でした。
素晴らしい出来の料理をご馳走になり、一息ついていると、高崎さんが恥じらいながら目を瞑ってくれと言いました。
高崎さんの頼みなら滝にも飛び込む所存の僕は、素早く目を閉じました。
まさかキス……!
期待に胸を膨らませていたあの頃の僕に説明をしてやりたい……。次に目を開くと、首輪に繋がれていたと……。
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