プロローグ『そんなことって……』

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じゃらじゃらと金属の擦れる様な音が聞こえましたが、ドッキドキの僕の鼓膜はシャットダウンしています。雑音にもなりません。 手も繋いでない関係に、僕みたいなクズでもやきもきはしていました。年頃ですから。 しかし踏み出す勇気は到底なく、今の状況に歓喜している自分がいました。こういうところが駄目なのでしょうが、僕はそんな自分を嫌悪するしか出来ませんでした。 鈴を鳴らしたかの如く涼しげで耳心地良い声が聞こえました。目を開けても良いとの旨に、少々がっかりしつつも、僕は目を開きました。 すると笑顔の高崎さんが待っていました。 何をしたのかな? ふと左右を見渡すも、変化は見られません。しかし首には違和感が。知ってはいけない、知ってしまっては後戻り出来ない、そんな不安に襲われましたが、僕は首に手を伸ばしました。 恐る恐る首に手をやると、肉体の柔らかさではなく、ベルトのように固い素材を感じ取りました。 嫌な予感がしました。鼓動が騒いでいました。警鐘のようにうるさく、僕は胸を押さえました。 それから後ろを振り返りました。深くは考えず、知り合いを見つけたかのように。 そこに待っていたのは知り合い等という生易しいものではなく、鎖というまがまがしい物でした。 鎖は壁から僕の首に伸びていました。手で鎖を引くと、首に震動が。漸く、僕の回転の遅い頭でも気付きました。 繋がれていることに……。 手を繋ぐ前に鎖で繋がれるとは夢にも思いませんでした。 「どんな感じですか?」 高崎さんが嬉しそうに、しかしどこか不安げに言いました。 「……複雑な感じです……」 考えず、僕はよくわからない返事をしました。 ここからです。僕の物語が始まるのは。 衝撃の幕開けには心配しかできませんでした。
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