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──と、まあオレと綾花さんのいきさつはこんなカンジ。
実は、オレの名前が藤本圭(ふじもとけい)だって教えたことも、彼女(彼?)から名前を教えられたのも、結構最近だったりするんだ。
「じゃあケーくん、アタシお店に行くから、あとよろしくね~!」
バッチリ化粧をキメ、背中を向け手をひらひら振ってる綾花さん。
「は……は~い……」
「あ、ケーくん?」
「ん?」
「わかってると思うけど、帰りはいつも通りお昼頃になるから」
「うん、いってらっしゃい」
綾花さんの背中に向かって言葉を投げかけると、
それを受け止めたかのように、もう一度手をひらひらさせてドアの向こうへと消えていった。
──うん、まあ今は夜なワケで。
綾花さんは夜のお仕事にいそしんでいる。
その仕事ってのは、もちろんオカマバーでの仕事で……
綾花さんは若いながら(オレよりは年上だけど)そこのママさんをやってるらしい。
そんで、オレはコレでも一応大学生やってて、半日はほとんどウチにいないから、
結構綾花さんとはすれ違いが多く、一緒にいられるのはオレが帰って来て綾花さんが仕事に行くまでかお互いの休みがかぶった時のみで。
けど綾花さんと暮らすまで、オレはずっと孤独な生活を送ってきたから、
こうして、誰かと一緒に暮らすっていうことが実は楽しかったり……する。
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