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「マスター!遅かったじゃないですかぁ~!」
「いや、悪かったね。少し道が混んでいてね。お待たせしてしまって、申し訳ない。」
泣きそうな顔で駆け寄る美果に荷物を預け、「マスター」と呼ばれるその男はカウンター越しに女性の正面に立ち
「いらっしゃい」
と、優しく微笑んだ。
「マスター、私、私…」
先程まで必死に瞳にへばりついていた涙が、男の顔を見た瞬間、大粒の雫となってこぼれ落ちていく。
「ゆっくり話を聞こう。まずは暖かいハーブティーでも飲もうか。」
男はにっこりと微笑むと、女性に放置されひんやりと冷たくなったティーカップを美果に手渡した。
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