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畠田太一が一声うなり声を上げたのは、彼が職場から帰宅し、書斎の机に置かれていた封書を開き、中に入っていた紙の文面に目を通した時だった。
「どうかしましたか?」
彼の妻である絹江が眉をひそめ、夫に問いかける。その封書は彼女が郵便受けからこの部屋まで運んできた物だったからだ。彼女が書斎を訪れる機会はその様な時しかなかった。
彼女は夫の前では貞淑な妻である。そのため、もちろん封書の中を覗いたりはしていない、また、彼のすることに口を出すようなことも無かった。ただ、今回は太一のうなり声に異様な物を感じ、問いかけずにはいられなかったのだ。
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