思い出

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『帰りたくないってのはわかった。でも仕事が出来る状態じゃないだろ?俺ももうすぐ仕事が終わるから送っていくよ。それまで横になってなさい』     それだけ言って吉田さんは医務室を後にした。     吉田さんも37歳だけど全然年には見えないし未婚だったよね。   吉田さんもバツイチって汚いって思うのかな…     自問自答をし、傷口が疼く。     約一時間して…   『さ、行こうか。起き上がれるか?』   『はい…』     私はフラつく体を起こして吉田さんの後をついていった。     ********   『ちゃんとシートベルトは絞めろよ』   『はい』     車に乗り込んでしばらく沈黙が続いた。     『んで、なんかあったのかい?』     タバコを手に取り火をつけて白い煙を吐きながらの質問。     『いえ、ただ体調が……』    『泣くほど体調が悪いのか?』     その質問に私は自分が泣いている事に気付いた。     『帰りたくないなら少し時間を潰すか』     私の反応を見てハンドルを大きく回し、私の自宅から段々と車は離れていった。
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